『死生観』

 

夜空を墓にしてください
どうせあの世とこの世の違い
生まれ変わってやり直すよ

 

羽

地を這う蟻と蜘蛛の行進
人間より多い足で歩いていれば
人間より寿命が短いのも頷ける

いつしか想望に押し潰された
二本の足で月影を駆け抜けて
一生分の心拍数を使い切った

母親がよく言っていたな
『あんたなら出来るから』
それは心が置いてきぼりの暗示
母親の手が人混みに消えた

夜空を墓にしてください
誰も干渉しないゴミ屑の夜空に
生まれ変わってやり直すよ

 

カラスが人間を嘲笑った
背伸びしても人間は届かない
闇の翼があれば天国に行ける

影が両手いっぱいに広げても
地から離れることは無かった
夜だけがお前の不道徳の刻限

母親がよく言っていたな
『あんたなら出来るから』
渇望が降臨させた狭隘な心
夜に去った今日の化身が明日

夜空を墓にしてください
人間が見捨てたゴミ屑の夜空に
生まれ変わってやり直すよ

 

希望を餌にしていたら
絶望の味が舌に染み付いた
真っ黒な舌出して笑ったっけな

孤独になったらもう一人になれない
世界から省かれたのに影はいつも足下
胸に杭が無期限に刺さったままだから

 

『僕にも出来たよ』
腹に帰る時の手土産は
臍の緒で首を絞めた
自殺の土産話ぐらいか