『スノーノイズ』

嘘で埋めた穴

 

不意に齧った赤い果実から感染
その日を境に僕の居場所は部屋の隅
耳を塞ぎ怒号を躱す日々が追い遣った

枕元に飲み込んだ苦悩を流し
僕の殺した殺意を懐に隠し
死灰で星が消え不安に覆われた世界に

盲目とは違う夜空に染まった雨
頬に不時着した雨を流れ星と見間違えた
僕をそっと抱きしめてくれた多重人格者

今の僕を創っていくのは日常ですね
その日常を変えていくのは僕ですね

 

感染から2ヶ月目未だ治療薬は無し
あの日を境に見えるようになった幻覚
涙で歪む世界が歩行感覚を奪っていった

雑草に飲み込んだ苦艱を流し
心に空いた穴を嘘で埋め
降り止まぬ感傷に覆われた世界に

全てを洗い流してくれるような
雨粒の雑音が僕の心と聴き間違えた
僕に空色の傘を差してくれた自殺未遂者

今の僕を創っていくのは日常ですね
その日常を変えていくのは僕と君ですね

 

捌け口が解らず自問自答した日々が
代弁者となって知らずにもう一人の君を創った
そんな君を僕は忘れないよ

赤い糸を切らずに手首を切り刻んだ
心を守る為の表現方法が傷だらけの君を創った
そんな君を僕は忘れないよ

 

一日だけでもと願ってたよ
『涙腺に栓をしてください』

一日だけでもと願ってたよ
『胸に口を付けてください』